チューダー(TUDOR)の魅力について 買取専門店「さくら鑑定」

ロレックスの“影”から輝く独自の進化 ~TUDOR(チューダー)の魅力に迫る~

歴史、デザイン、そして現代の存在意義とは?

一流の時計ブランドと聞いて、まず思い浮かぶのはやはり「ROLEX(ロレックス)」かもしれません。

しかし近年、そのロレックスの“弟分”として生まれながら、独自の世界観を築き上げ、世界中の

時計ファンから注目を集めているブランドがあります。それが「TUDOR(チューダー)」です。また、

日本では2018年まで「チュードル」とも表記されていたこのブランドは、単なるロレックスの

廉価版という枠を超えて、いまや堂々たる高級時計ブランドとして確固たる地位を築いています。

その魅力は、歴史、技術、デザイン、戦略と多岐にわたり、ヴィンテージファンから現代の時計

ビギナーまで幅広い層を惹きつけています。

本コラムでは、チューダーのルーツから現在までを深く掘り下げ、なぜ今、これほどまでに人気が

あるのか、今回はそんなTUDORの歴史、デザイン、技術、マーケティング戦略、そして現代に

おける存在意義、どのような点が他ブランドと違うのかを、時計ファンなら誰もが知っておきたい

魅力を深く掘り下げ、時計愛好家の視点で紐解いていきたいと思います。

 

ロレックスの“弟”として誕生 ─チューダーの歴史とは?

TUDORは、1930年代にロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフによって設立された

ブランドです。その目的は明確で、「ロレックスの品質と信頼性を受け継ぎながら、より手に

取りやすい価格で提供すること」でした。当時のロレックスはすでに高級時計ブランドとしての

地位を築きつつありましたが、一般層にもその品質を届けたいという願いがTUDOR誕生の

背景にあります。つまり、当初は“ロレックスのサブブランド”的な立ち位置で展開されていました。

そのため、ケースやリューズ、ブレスレットにはロレックス製のパーツが使われていたり、

王冠マークや“ROLEX”の文字が裏蓋に刻印されていたりと、両者の深い関係性が伺えます。

1946年に正式にブランドとして確立されたTUDORは、初期からミリタリーやプロフェッショナル

用途にフォーカスし、フランス海軍に納入されたサブマリーナ系モデルなど、過酷な現場で信頼される

道具として進化してきました。これは、ロレックスがややドレッシーな方向性を保ち続けたのに対し、

チューダーが“ツールウォッチ”の道を歩んだことを示しています。

しかしムーブメントには主にETA社製の信頼性ある汎用ムーブメントを採用することで、コストを

抑えながらも信頼性とメンテナンス性を両立していました。まさに「質実剛健」の精神を体現した

ブランドとして、スイス時計のもうひとつの王道を歩み始めたのです。

 

自社ムーブメントの開発 ~チューダーが“本物”の時計ブランドになった瞬間~

長らくTUDORは、ETA製ムーブメントを採用していました。ETAはスイス最大の汎用ムーブメント

メーカーであり、多くの高級ブランドが使用しているため、それ自体は決してネガティブでは

ありません。ただし、ブランドとしての“格”を一段上げるためには、自社製ムーブメントの

存在が不可欠です。この状況を打破したのが、2015年に発表されたCal.MT5621でした。これは

TUDOR初の完全自社開発ムーブメントであり、以降、ブラックベイやペラゴスなどの主力モデル

に搭載されています。COSC認定の高精度、約70時間のパワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマク

など、他社ハイエンドモデルにも匹敵する仕様を備え、これによりTUDORは「ロレックスの廉価版」

から、「高性能な独立ブランド」へと確かな進化を遂げたのです。

 

TUDORを象徴するデザインアイコン ~プリンスデイト、ペラゴス、ブラックベイ~

チューダーの時計の中でも、ファンが特に愛してやまないシリーズがいくつか存在します。

まず、「プリンスデイト(Prince Date)」シリーズ。

こちらはロレックスのデイトジャストに似たクラシックなルックスながら、チューダー

独自のディテールが光るドレスウォッチ。特に90年代に展開された“タイガー”シリーズは、

ゴルフ界の伝説「タイガー・ウッズ」とのコラボであり、スポーツとエレガンスが融合した

名作として語り継がれています。次に注目したいのが、

ハイスペックなダイバーズウォッチとして名高い「ペラゴス(Pelagos)」シリーズ。

軽量なチタン製ケース、500m防水、逆回転防止ベゼル、自動ヘリウムエスケープバルブなど、

プロ仕様のスペックを誇ります。完全自社製ムーブメント「MT5612」を搭載し、他社と比べても

見劣りしない技術力の高さを感じさせる一本です。

そして、TUDORの現在の顔とも言えるのが「ブラックベイ(Black Bay)」シリーズ。

1950年代〜60年代のダイバーズウォッチを現代風にアレンジしたヴィンテージ感あるデザインが

特徴で、発売以来爆発的な人気を誇ります。スノーフレーク針とドーム型サファイアガラスが、

往年のファンをも魅了。シンプルで飽きのこない外観ながら、細部にまでブランドのこだわりが

詰まっています。

 

ミリタリーウォッチとしての誇り =フランス海軍に愛された“本物のツール”=

チューダーの真骨頂は、単なるラグジュアリーではなく「本当に使える道具」としての側面

にあります。その最たる例が、1950〜1980年代にフランス海軍(Marine Nationale)に

正式採用されたダイバーズウォッチです。ロレックスのデザインをベースにしながらも、

より実用的な仕様にアレンジされ、過酷な任務に耐えうる信頼性と堅牢性を備えていました。

この時代のモデルに搭載されていた「スノーフレーク針」は、視認性を高めるために

デザインされたチューダー独自の要素で、現在のブラックベイシリーズにも踏襲されています。

これらの実績は、ブランドの実用性を証明するものであり、いわゆる“ファッションウォッチ”とは

一線を画す「プロフェッショナルのための時計」としてのプライドが根底にあります。

デザインに見る独自性と完成度とは・・・。“ロレックスに似ている”は過去の話!!

かつてチューダーは「ロレックスのそっくり版」や「廉価なロレックス」と見なされていましたが、

近年のモデルではむしろ“チューダーにしかない”個性を明確に打ち出しています。

その中心にあるのが「ブラックベイ(Black Bay)」シリーズです。

1950〜70年代のヘリテージモデルをリスペクトしつつも、現代の技術とデザインセンスを融合した

このシリーズは、クラシックかつモダンという両立の難しい領域を見事に成立させています。

レトロなサブマリーナ風のデザインに、スノーフレーク針やリベット風ブレスレットなど、

細部にこだわったヴィンテージディテールを再現しています。

ブラックベイ・フィフティエイトやGMT、クロノなどバリエーションも豊富で、用途や好みに応じた

選択肢が多いのもファンの心を掴んで離しません。いまやブラックベイは、単なるラインナップの

一つではなく、TUDORというブランドを象徴するアイコンとなりました。

 

自社ムーブメントの開発と導入 ~機能性と高性能を両立する革新~

2015年、TUDORは初の自社製ムーブメント「MT5621」を発表。これを皮切りに、主力モデルには

続々と自社ムーブメントが導入され、性能面でも一流ブランドとしての地位を確立しました。

COSC認定の高精度、耐磁性能、約70時間のパワーリザーブなど、そのスペックはロレックスを含む

ハイエンドブランドとも遜色ありません。ETAムーブメントを使用していた頃も高い評価を受けて

いましたが、やはり“自社製”ムーブメントはブランドの信頼性と価値を一段引き上げる要素であり、

現在のTUDOR人気を支える大きな要因となっています。さらに、価格帯は50万円〜70万円台と、

オメガやタグホイヤーと同等か、モデルによってはやや抑えられており、コストパフォーマンスの

面でも群を抜いています。

 

オメガ・タグホイヤーと並ぶ存在へ ~スポーツとモダンデザインの融合

TUDORは、オメガ(OMEGA)やタグホイヤー(TAG HEUER)といった他のスイス名門ブランドと

比較されることが多くなってきました。これは、価格帯が近いだけでなく、それぞれがスポーツの

世界と深く結びついているためでもあります。

オメガは、宇宙飛行士の腕時計として「スピードマスター」を擁し、シーマスターでは映画『007』

シリーズとの関係が有名。タグホイヤーはF1やモータースポーツの世界で絶大な知名度を誇ります。

一方のTUDORは、アイスランドの冒険家、フランス海軍のダイバー、ラグビーやサイクリングの

プロチームなどとのパートナーシップを築き、実用性と信頼性を前面に押し出してきました。

さらに、ブランドアンバサダーに元サッカー選手のデヴィッド・ベッカムを起用するなど、モダンで

スタイリッシュなマーケティングも展開。これにより、時計に詳しくない層にも“TUDOR”の

名が届くようになってきたのです。

 

ヴィンテージから最新モデルまで、魅力が尽きないブランド

TUDORの魅力は、現行モデルだけにとどまりません。むしろ、ヴィンテージ市場でも高い評価を

受けていることは、注目すべき点です。とくに“スノーフレーク針”のサブマリーナや、ロレックスの

パーツを使用していた初期モデルなどは、コレクターが欲しいと喉から手が出る程の品物です。

さらに、タイガーウッズモデルのような90年代のスポーティな顔立ちを持つ時計も、再評価が

進んでいます。これほどまでに広い層から支持を集めるブランドはそう多くありません。若い世代の

ファーストラグジュアリーとして選ばれることもあれば、熟練コレクターのコレクションに

加えられることもある。その懐の深さが、TUDORを“いま最も魅力的な時計ブランドのひとつ”

たらしめているのです。

 

コレクター市場での再評価と価値の上昇

近年、ヴィンテージTUDORの人気はますます高まっています。

かつては「ロレックスほどの価値はない」と考えられていた旧モデルも、現在ではその希少性、

デザイン性、歴史的価値が見直され、多くのコレクターが注目しています。特に70年代の

ミリタリーモデル、初期サブマリーナ、タイガーシリーズ、プリンスオイスターデイトなどは、

オークションや専門店でも高値で取引されるようになりました。こうした背景には、単に

“古い時計”としてではなく、“歴史を持つ魅力的な物語”として時計を捉える文化が根づいてきた

ことがあります。時計の価値はムーブメントや素材だけでなく、「誰がどのように使ってきたのか」

というストーリーによっても深まります。TUDORの時計には、実用に根ざした歴史と、

その中で育まれたデザイン美が確かに存在しているのです。

 

現代におけるTUDORの位置づけ ~ラグジュアリーとリアルユースの交差点~

現代のTUDORは、単なる“ロレックスの弟”ではありません。

むしろ、ラグジュアリーとリアルユースのちょうど中間に位置する、「等身大の高級時計」として

確固たるブランド哲学を築いています。それは、OMEGAやTAG HEUERといった名門ブランドとも

異なるスタンスであり、「本当に自分が着けたいと思える一本を、納得のスペックと価格で手に

入れる」という選択肢を提供してくれるブランドです。たとえば、スーツに合わせてクラシックな

プリンスデイトを着ける。アウトドアでは堅牢なペラゴスで安心感を得る。ヴィンテージ感あふれる

ブラックベイを休日のカジュアルコーデに取り入れる。こうした多様な使い方を受け止めてくれる

のがTUDORなのです。

 

チューダーとは“語れる時計”である

いま、TUDORの時計がこれほど支持されている理由。

それは、単に高性能なスイス時計というだけでなく、「語れる時計」だからです。

ロレックスとの関係に始まり、軍用時計としての栄光、ヴィンテージの魅力、現代のデザイン革新、

自社ムーブメントへの挑戦──どの側面を切り取っても、そこにはブランドとしてのストーリーが

あり、ユーザー自身のライフスタイルと重ね合わせることができます。これから初めて機械式時計を

手にしたいと考えている人にも、すでに何本も所有しているベテランコレクターにも、TUDORは

常に“もう一本持ちたい”と思わせてくれる不思議な力を持っています。それは、ただのラグジュアリー

ではなく、「日常に寄り添う贅沢」として、時を刻み続けるからなのです。
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